私の真ん中

甘いものが好きです。

街灯、イメージ、落下する。

もう少しわたしに言葉の才能があれば
今にも溢れ出していくイメージを一つ残さず全部救い出せるのに、
昨日の夜のあの信号の風景とか
ぶうああと心の中心から何かが湧き出すのを感じているのに
どんどん地下に落ちていってしまう
そして忘れていってしまう

もったいない。
あたしのモニカと、深夜潜水みたいな
色の濃いイメージじゃないとだめなのか、
これも全部、わたしだけの秘密。

君にはわかりにくく教えてあげる
いつかの夜に思い出して
三日月の裏の笑顔とか、
一緒に見た流星群とかも全部。

夏の匂いが消えていって
どんどん君の姿が遠くなってゆく
冷たい水が身体の中心までとどけば
私はもう少し眠れるようになる

柔らかい風が君の髪の毛を撫でるように
雨上がりの匂いはまだ遠くたって
君の心を貫通して散らばっていった
言葉のかけらが見つからないの

両手じゃ抱えきれない思いとか
1日じゃ伝えきれない気持ちとか

ああ、どうして同じ世界に生きていたって
同じ朝を迎えられないんだろうか。

まだ夜の深いところから抜け出せない、
あたしは君の声を感じて歩く
目を閉じていたって感じてしまう光の溢れる方へ、いつだって、
灰色の目、鈍色の目、あなたの好きな花。私の苦手な言葉。
車の通り過ぎる音、室外機の悲鳴。
雨だ。雨に隠れて泣いているのは、誰なんだろう。

地下、遠恋

好きな人がすべてだった
彼の言う言葉一つで世界の色が変わった
あたしが今いる暗い部屋も
目を閉じれば桜だって咲き誇るだろうに

それくらい不安定な世界で生きてる
誰かにすがりついて泣いたっておかしいことはないよ
でもあたしはずっと動けない
呼吸と笑い方さえ忘れなければ
人として生きていけるのだと彼は笑った

言葉を変えて、同じことを言っているだけだよ
私が醜いのは君ももう気づいただろう
だからあの日からなにも変わっちゃいない

私の目が光ったこととか
新宿の夜のうるささとか
一緒に月が見たかったのに
傘の下で笑いあっていたことも

全て愛として、形容してくれたら
そうして生きることも楽になったら、

どれほど。

不似合いな黒

白線からはみ出してはいけないんだと笑った。彼女のその言葉を信じて歩き続けた。

あれから二年経って、私の嫌いな冬が近づく。今年のコートは何にしようかと語る人たちを通り抜けて、私は去年買ったニットを取り出した。
音楽にも洋服にも、当時好きだったものにも、きっと誰かしらのスパイスが混ざっていて、鼻と心をくすぐる。そうだ、私は君が好きだった。

この服を着て知らない東京に行った。小さくて広い東京に。
息が白くなって、甘い贈り物を渡す日もとっくに終わって、
今年の桜は誰とどこに見に行けるのかなと考えていた。真っ暗闇の下。

君の大きな手に触れるのが好きだった。いつだって手を合わせて「大きいねえ」って笑っていた。
あの頃から少し気を張っていたんだと思う。退行と背伸び、不釣り合いな二人。
私は君といるときだけ、全てを特別に変える魔法が使えたんだと思う。

二年後の東京も何も変わらない。歌舞伎町も怖くなくなって、新宿に愛着さえもつようになった
この眠らない街がある限り、私たちは紛れるのだ。ヒールなんて履かない私が、この冷たい街で静かに息をしている。

彼が彼女にちゃんと巡り合えますように、止まっていた時間が動きますように、自ら消えてしまいませんように。残されたものはたとえなくても、彼が明日を正しく選びますように。

いくら迷ったって、自分が選んだ道に間違いはないのだと彼女は言っていた。だから、まだ私は赤信号から離れられない。

冬が来る前に、雪が降る前に、また新しい年が来る前に、新しくなってしまう前に、

捨てるだけがお終いの合図じゃなくて、きっと全部は拾えなくたって。

この両手が抱えきれない程の何か、私がずっと着たかったワンピース。

肺が苦しくなるほどの酸素、呼吸、止まったら負ける。昨日の私に。

鋭敏な青

私はひとりぼっちの暗い夜が嫌い


真っ赤な色が好き。

そしてそれが自分に合うと思っている。


青い人、夜に紛れる人。


きっと私は勘違いをしていて

君も私も何色にだって染まっていけるんだって


でもその消えちゃいそうな姿を見ていたかった

私の目はもうすぐあなたを感じられなくなる。


構ってくれる人が好き。うるさい人は嫌い

言葉の汚い人は苦手、でも笑うときは目をくしゃってして。

ねえ。


言葉にしたくないの、

傷跡に残したくないの。


でもいつでも思い出せるように、

私の一部にするためには君を表現しなくちゃいけない

あたしの言葉で。あたしだけに伝わる呪いで。


私は春を知っている。満開の桜も、左手の温もりも。

赤信号と排気ガスの匂いと、

どうしたって愛してしまう東京の街を。


いろんなことを思い出しても、結局君に辿り着いてしまう。

私の幸せを表わすのは彼で、それはあなたからしたらとてもいびつだ。


次は間違えないとか、そんなのもうどうだっていいの。

私は君を一生愛し続けるだろうから、また来世で会おうね。


その時は。


その視線の先に

 

よく喋る人が苦手だ、
何を思っているかわかってしまうから。
君は全く話さなかったから
私は傷を増やさずに期待を膨らませた
でもその目はいつも遠くを見ているようで
私じゃない誰かをいつも追いかけてた
そのように見えた。そう思いたいだけ。

私はやっぱり見られることに慣れていない
たまに受け取る優しい言葉だって私の命を伸ばす嘘にしか聞こえない
そうやって複雑に受け入れて明日を生きることも難しくなる
もっと簡単に生きたい

でも私は誰かの一番にはなれなくて
それは当然だから仕方ないのであって
適当な人の一番なんかなりたくなくて
私は君に愛されたかったんだと気づく。最初から知っていたけど。

軽いくせに重く考えるし
あのとき見た夕焼けは忘れないし
たぶん全部なくすにはもったいない
まだ十分に生きてやしない

あなたの、瞳にうつるのは、あたしだ。

恋をしてる

 

どれだけ遠くにいったって

いつだって傍にいてくれてしまうのだと

 

夏が来たのだから夏のせいにしてしまっていい

そうして私たちは生きていくんだよって

間違えることが正しいって、よく意味がわからなかった。

あなたの生き方はいつだって間違っていたけれど

とても綺麗で羨ましかったんだよ

 

明日は休みだ。

人生には休みなんてないのに。

今日はたくさん寝てもいい?

でも明日も早起きしなくちゃなの。

 

どうかだれかそばにここに、

あたしの向かう先にはあなたがいるべきだ。

 

風が吹いて、髪が揺れて、

あの横断歩道までもう少し。

私がいつまでも眺めていた、

あの赤信号までもう少し。

まなつのゆめ

 

私は君の知らないたくさんの気持ちいいことをしてきたけれど

きっと知らない方が幸せだと思う

 

あのラインの向こう側、

私が軽蔑する世界。

 

満たされるために我慢する必要があって

火傷の跡をなぞって微笑む私はまだ弱い者なんだろうな

 

真夏、そろそろ秋に注意が向く

今年も終わってしまうけれど、私はどうにも垢抜けないんだ。

 

君のこと引きずってる。ううん、そんな重たい言葉で表したくないの。

月とか太陽とか、そんな陳腐なものに例えたくもない。

 

決して触れられないのにいつだってそばにいる。

私の脳みそは都合良くできている。

 

君はどうなっているの?

もうすぐ夏は終わってしまう。

 

それでも、

あたしのゆめはおわらせたくない。